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ようこそ!ジュリークのピュア旅inアデレード

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花の中の花、ローズ。

ローズの持つ圧倒的なパワーとは

WRITER PROFILE

馬田草織(ばださおり)

文筆家・ポルトガル料理研究家。東京都生まれ。出版社で食を中心に雑誌編集に携わり独立。 食や旅を中心に執筆。素朴で親しみやすいポルトガルの食に魅了され、一般家庭のキッチンからレストランの厨房、ワイナリー等への取材を行っている。著書に『ようこそポルトガル食堂へ』(産業編集センター・幻冬舎文庫)、『ムイトボン!ポルトガルを食べる旅』(産業編集センター)。料理とワインを気軽に楽しむ会「ポルトガル食堂」を主宰し、定期的な料理会やイベントなどを開催している。

花にあまり詳しくない人でも、ローズは花の中の女王的存在であり、特別なものであることは知っている。でも、それってなんとなく。そもそも、どうしてローズが特別な存在なのだろう。ローズが歴史上の逸話にもたびたび登場し、貴重なものとして尊ばれてきたのはなぜだろう。

オーストラリアのジュリーク農園でも、1985年の開園以来、ローズは特別な存在として大切に育てられている。世界の歴史上において、ローズがどのように愛されてきたのかを探ることで、この花の特性や魅力をあらためて知っておきたい。

特別な花であることを示す
歴史上のローズのエピソード

歴史を遡るとはるか古代のシーンから、ローズはあちこちに登場する。たとえばペルシアでは紀元前12世紀ごろ、すでにローズを祭祀や香料、薬として利用していた。ギリシアでも紀元前から薬や香料、観賞用に栽培していた。紀元前6世紀頃活躍したギリシアの詩人は、ローズの魅力をこのようにうたっている。

〜花摘みて、手に取ればやさし。身体に押しあてれば匂いもやさし。宴会やディオニソスの祭りに薔薇なくしていかにせむ。〜『アナクレオン風55』

ローズは花も美しいが、香りにも大きな魅力がある。嗅ぐものの心を酔わせるような高貴な香りの特性は、多くのエピソードを生んできた。なかでも有名なのは、古代エジプト最後の女王クレオパトラが、ローマの英雄アントニウスの心を奪ったといわれるストーリー。彼女がローズを一面に敷き詰めたベッドに横たわっていたことが、誘惑の引き金を引いたと言われている。むせ返るようなローズの香りに包まれたクレオパトラは、アントニウスの視覚だけでなく嗅覚にも、その魅力を強烈に訴えたのだろう。また、クレオパトラ自身も日常的にローズを愛したよう。邸宅の宴会場には切り花を豪華に飾り、ダイニングの床には花びらを敷きつめ、バラのお風呂に入り、ローズオイルを肌に塗り、ローズの香りに囲まれて暮らしていたという。

古代ローマの博物学者プリニウスの『博物誌』にも、ローズの記述は詳しくある。そこには、冠婚葬祭や宴会などで花冠として使われていたほか、頭痛や二日酔いを抑える薬草としての効用を期待され宴会で使われたり、花びらを用いてぶどう酒の風味づけ、あるいはサラダにして食べたり、油に浸してローズオイルにし(当時はまだ蒸留する技術がなかった)、それを軟膏や目薬等に使ったとも記されている。また興味深いのは、ローマで当時人気だったローズの種類や値段についての記述。ローマの人々が、より良質で安い花を求めローズを輸入していたことも書かれている。美しさを愛でたり、薬効を日常に生かすなど、ローマの時代には、すでにローズがほかの花とは違う特別なパワーを持っていることを人々はよく知っていたのだ。

美しさや香りに留まらない。
ローズは女性をすこやかにする贈り物

ローズはその多くの効能から〈天使の贈り物〉とも呼ばれる。この特徴的で優雅な香りは人を幸せな気分にさせるうえ、肌のキメやハリを整えると言われ、古来より美と健康をもたらす植物と言われてきた。現代では、ローズの香りにも何か秘密があるのではと様々な研究がされている。この香りが脳に届いて下垂体を刺激すると、女性ホルモンの分泌を促進することが分かってきたという。女性ホルモンの分泌量が低下すると健康面だけでなく、シミやシワが増えるなど美容面にも影響が出る。つまり、女性ホルモンの分泌は美と健康の鍵となるものであり、ローズの香りはこの分泌に大きな影響を与えることが出来るかもしれないと期待されているという。アロマテラピーでもローズは大変高価な精油の1つで、1滴を作るのに、50本ものローズが必要と言われる。凝縮したローズのパワーを日常的なケアに加えることは、いまも昔も変わらない美の秘訣なのかもしれない。

【参考文献】 
日本アロマ環境協会Precious.jp ELLE ※外部サイトにリンクします。
※注_植物の特性や最近の研究情報であり、弊社使用植物、ジュリークローズおよび商品と直接の関係は一切ございません。 

健康で逞しい、
ジュリーク農園のローズ

美しく香り豊かでパワフルなローズは、長い歴史を経て今もなお、女性のゆらぎやすい身体をやさしく整えてくれている。そんなローズは植物の中でも別格であり、育て方にも工夫が必要だ。その難しさから、ローズブリーダーと呼ばれる生育の専門家が世界中にいることは第3回の連載でも触れたが、ジュリーク農園のローズも同じ。特に新種の開発には、専門知識を持ったブリーダーが育成にあたる。

さらにジュリーク農園では当初から一貫して、バイオダイナミック無農薬有機農法でローズを育てている。そのため非常に健康的で、特に色、耐病性、香りも強く美しい、生命力のある生き生きとしたローズが咲き誇るガーデンとなっている。無農薬、無化学肥料でローズを育てる園の様子は、創業者のウルリケさんが2001年のインタビューでこんなふうに語っている。

「ジュリークのローズは一切化学肥料を与えないので、たとえば春先にはローズにアブラムシがついたりします。でも、私たちが焦って慌てなくても、農園にいるカマキリや、共存している生き物たちが除去を手助けしてくれるのです。そんなふうに農園の仲間に助けてもらう一方で、毎日丁寧に水をやり、害虫予防のためエンドウ豆、ロシアニンニク、タンポポ、その他のコンパニオンプランツを周りに植えることで、パワフルなローズが育つのです。殺虫剤や殺菌剤を散布したり、化学肥料を与えたりしたことは一度もありません」さらにジュリークのローズガーデンは、収穫にも最大限の配慮と工夫を凝らしている。「農園全体の中で、ローズガーデンの広さは1/4程度。決して広くないスペースです。それなのに、毎年莫大な収穫量を可能にしていることによく驚かれます。その秘密は、健康的なローズをすべて手作業で採取し、年に何度も摘み取るからでしょう」

つまりローズの収穫作業においても、手間を惜しまずに手作業を繰り返しているのだ。

「ローズの花の収穫を機械に任せると、一度に花のすべてを切り取ってしまいます。そうなると、花の収穫は1シーズンに1回かあるいは2回しかできない。一方、手摘みは花にやさしく、植物のダメージを最小限に抑えるため、花を早く回復させることができ、結果として年に5〜6回と繰り返し花が咲く。つまり、手間を惜しまず花をやさしく摘み取れば摘み取るほど、生産量は増えるのです」

長い年月を経て進化した、ローズの栽培方法。特に農薬や化学肥料が登場した現代にあって、ジュリーク農園では38年以上の長きに渡り、バイオダイナミック無農薬有機農法を続けてきた。この地道な栽培と収穫の方法が、ジュリークのローズをよりパワフルにしてきたと言える。そしてそのローズから抽出されたエキスがスキンケアアイテムとなり、私たちの日々を潤してくれる。

古来から崇められてきた花の女王ローズの力。長い歴史の中でそれを最も気軽に身近に利用できているのは、現代を生きる私たちなのかもしれない。

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