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ようこそ!ジュリークのピュア旅inアデレード

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牛の角や水晶も、循環する大地のエネルギー。

バイオダイナミック無農薬有機農法の世界って?

WRITER PROFILE

馬田草織(ばださおり)

文筆家・ポルトガル料理研究家。東京都生まれ。出版社で食を中心に雑誌編集に携わり独立。 食や旅を中心に執筆。素朴で親しみやすいポルトガルの食に魅了され、一般家庭のキッチンからレストランの厨房、ワイナリー等への取材を行っている。著書に『ようこそポルトガル食堂へ』(産業編集センター・幻冬舎文庫)、『ムイトボン!ポルトガルを食べる旅』(産業編集センター)。料理とワインを気軽に楽しむ会「ポルトガル食堂」を主宰し、定期的な料理会やイベントなどを開催している。

いま食べたものや、さっき飲んだもの。昨夜寝る前に肌につけたもの。私たちは、自分が日々選んだもので作られている。それならば、少しでも美しくすこやかになれるものを選びたい。ものをシビアに選ぶようになると、その原材料がどこでどんなふうに作られたのか、産地の環境や育成方法が知りたくなります。そんなときに出会う言葉が、有機栽培や無農薬、オーガニック、バイオダイナミックといった農業の用語。でもこれって、あらためてどういう意味なんだろう。

今回はこの素朴な疑問を、畑で日々実践している人に聞いてみます。世界でも稀有なオーガニックライフの聖地であり、豊かな自然環境に恵まれた、オーストラリア南部のアデレードにあるジュリーク農園。この地で1985年の創業時から行われているのは、まさしくバイオダイナミック無農薬有機農法。日々どんなことが行われているのか、まずは4月の様子をのぞいてみます。いざ、農園へ。

オーストラリアの4月は秋真っ盛り。
根菜類の収穫と、
畑の土作りを行う準備の季節

北半球の日本が暖かい春を迎える頃、南半球にあるオーストラリアの4月は暑さが落ち着きすっかり秋。
ジュリークの広大な農園では、収穫や畑の手入れなど、いくつもの作業が並行して行われています。この時期、収穫されているのは根菜類(といっても、大根や蓮根といった食べる根菜ではなく、エキナセア、マシュマロー、リコリス(甘草)といったエキスを抽出する植物ですぞ)。なかでも人気化粧水「ハイドレイティング ウォーターエッセンス +」に配合されているマシュマローという植物は、地下およそ1メートルほどに伸びた、ごぼうのように太くなった長い根からエキスを抽出します。
ちなみにマシュマローは、約2000年前から世界各地で重用されてきた植物。肌を柔軟に、すこやかに保つといわれ、粘性が非常に強いのが特徴。弾力のあるエキスは、お菓子のマシュマロの語源にもなっているほど。
昔はあのムチムチふわふわなお菓子の原料だったなんて、驚きです。

農園では、それらの収穫を行うのと同時に、畑の基本となる土作りも行います。これは、植物を育てるうえで最も重要な作業だそう。具体的に、どんなことが行われているのだろう。

植物や虫、動物の堆肥など自然の力をフルに使い、
土を柔らかくほぐし、土に力を与える

話を伺ったのは、ジュリーク農園の責任者であるCherie Hutchinsonさん。
まず、バイオダイナミック無農薬有機農法ってなんでしょうか?
「ジュリーク農園で実践されているバイオダイナミック無農薬有機農法は、一切の農薬や化学肥料を使わずに、動植物の持つ自然の力だけで土を作り、植物を育てます。なかでも秋は最も大事な土壌を作る季節。畑の土を柔らかくし、土壌に栄養を与える作業を行います」

土を柔らかくするって、たとえば耕すとか?
  「まずは肥料になる植物、ハウチマメやイエローマスタードなどを畑に植えます。これらが大きく育ち、根が土の中にしっかり伸びたら、クワで掘り起こして切り刻み、土に混ぜ込んで土中堆肥を作ります。こうすることで土壌が柔らかくなり、健康な土づくりに欠かせない天然のバクテリアやミミズなどの虫を呼び集めることができます。さらに、鶏のフンや刈り取った雑草などを合わせて腐植土の堆肥を作り、これらも土に加えます」

植物の根が這うことで土がほぐれ、さらに育った植物ごと土に混ぜ込んで緑肥にする、ということですね。そしてこれらすべては自然の力。

「また、ミミズが活発に動くことでさらに土壌が柔らかくなるので、農園ではミミズを育てて土の中に放っています。ミミズの活動により空気が土の中に取り込まれ、水がより効果的に浸透するようになるのです。その効果で植物の根はさらに大きく広がって伸び、土を柔らかくしてくれる。これにより、もっと多くの微生物や虫が集まるようになります。緑肥や堆肥、ミミズなどの虫や微生物の働きで、私たちの畑の土壌は生命力と活力に満ちてくるのです」

自然の力を集めると化学肥料も必要なし、ましてや殺虫剤など出番なし、というわけ。なるほど、化学肥料が用いられる以前の昔ながらの農業は、生き物総出で行われていたということなのね。ナチュラルな環境は、アンナチュラルな人工物が取り入られたことで、より意義深くなった。皮肉な話でもあるのね。

牛の角に水晶。
地球や宇宙のリズムを読み取る
メソッドの不思議

さらにバイオダイナミック無農薬有機農法の面白いところが、有機肥料としての調合剤作り。よく聞くのは、たとえば牛の角に牛糞を詰め、土に埋めるというもの。でも、なぜに牛の角?

「この農法では、牛は大地や宇宙の循環、エネルギーと非常に関係が深いと考えられています。私たちは牛の角、正確には少なくとも1回の生殖サイクルを経た授乳期のメス、つまり子牛を産んだ牛の角だけを使っています。牛の角は生殖サイクルと関係があり、生命を与えるものと考えられているのです」

実際に使われているのは、焼却廃棄されてしまうような食肉用の雌牛の角。バイオダイナミックサイクルの一部として捉え、大地のエネルギーに転用しているそう。では、その牛の角に牛糞を詰めるのはなぜ?

「牛の角につめた牛糞を数ヶ月間地中に埋めて取り出すと、豊かな土のような粉に変化します。それを34リットルの水に入れ、1時間ほどかき混ぜます。これが私たちの作る有機肥料のひとつ。これを年に数回、春と秋の午後遅くに農園全体に巻きます。これによりミミズや微生物を引きつけ、腐葉土の生成が良くなり、最適な土壌を作り出せるのです。さらに植物の成長を促すため、牛の角に透明な水晶を詰めて地中に埋めます」

牛の糞は肥料として理解できるけど、アクセサリーなどにも使われるあの水晶を、牛の角に詰めて土に埋めるのは、どうして?
「水晶は、地中のミネラルや微量元素の吸収を促し、果物の甘みや植物を乾燥させたときの食物繊維を増やしたり、花や芝生の病気、害虫、菌類に対する耐性を強化したりします。また、樹液の糖分を整え、余分な樹液を根に送って有益な微生物を養い、植物の光合成をサポートする働きがあると考えられています。具体的な作業としては、透明な水晶を牛の角に詰め、夏の間地中に埋めます。その後取り出し、農園で集めた雨水の中に入れ、特有のかき混ぜ方をしたものを、春と朝の早朝4時半に8の字を描きながら撒きます」

鉱物にも、自然の力が宿っているという考えなんですね。では、かき混ぜ方や、巻くときに8の字を描くのはなぜ?
「具体的には、雨水をぐるぐる回して渦を作り、それをバラバラにして逆渦を作ります。そして左と右に混ぜていきます。こうして正しい状態の秩序と、その逆の混沌をわざと作ります。すると水は滑らかでまろやかになり、バイオダイナミックの力を受けやすくなるのです。そして、この作業では瞑想も同時に行います。この工程がカオス(混沌)を作り、自分のパワーをこのプロセスに移すことができるのです。水のエネルギーにパワーを送り込み、完全なサイクルを作りあげると考えられています」

おお、なんとスピリチュアルな作業工程、神秘的すぎる。なんだか畑の土づくりをしながら、作業する人の心も整えているようなイメージ。

「私たちの農作業は、宇宙のサイクルや月の位置、特定の惑星のすべてを見た上で、時期によって時間を決めています。すべてはアストロカレンダー(南半球のバイオダイナミックカレンダー)に明記されている時間です。このカレンダーを元にすると、エネルギーとバランスが最も良くなる時期が分かる。バイオダイナミック無農薬有機農法の農作業に大切なのは、自然の持つエネルギーとのバランスなのです」

普段の暮らしが、すでに完全に合理化されて自然とかけ離れている私には、1年ぐらい現地で暮らしてみないと想像もできない世界。でも、豊かな自然を感じる環境にあるアデレードなら、そんなリズムは案外身近に感じられるのかもしれません。もはや想像と畏怖と憧れのバイオダイナミックなオーガニック農園、きっとその場に身を置くだけでも、心が軽くなれるような気がします。とりあえず、水晶のアクセサリーでも身につけてみようかな。

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